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マイコプラズマ・ウレアプラズマのよくある質問について医師が解説
病気について2026年8月21日
マイコプラズマ・ウレアプラズマのよくある質問について医師が解説

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、菌種によって病原性や治療の必要性が異なります。第4回では、患者さんからよくある質問について、常在菌かどうか、検査対象、自然消失、将来的な影響、治療後も陽性が続く場合、不妊症検査やブライダルチェックで陽性だった場合の考え方を解説します。
*監修:予防会 名古屋クリニック院長
第1回では、マイコプラズマ・ウレアプラズマの基本情報、診断法、検出頻度について解説しています。
第2回では、マイコプラズマ・ウレアプラズマの病原性と症状について解説しています。
第3回では、マイコプラズマ・ウレアプラズマ陽性時の治療の考え方について解説しています。
Q1. マイコプラズマ・ウレアプラズマは常在菌ですか?
A1
マイコプラズマ・ジェニタリウムは病原菌として取り扱われますが、それ以外の菌種は、「常在菌でありながら条件によって病原体にもなり得る菌」として理解されています。
マイコプラズマ・ウレアプラズマが常在菌なのか、病原菌なのかについて、専門家のあいだで長いこと議論されてきました。ホミニスやウレアプラズマは、健康な男女の泌尿生殖器から高頻度に検出され、多くは無症状で保菌されており、検出されたこと自体は感染症や疾患を意味せず、保菌者の大部分は特に問題を起こさないとされています。
保菌していても無症状というのは、宿主(ヒト)の免疫や尿路・腟内の微生物叢(マイクロバイオーム)とのバランスによって菌が過度に増殖せず、炎症も起こりにくい状態が保たれているためと考えられています。
一方で、抗菌薬の使用、ホルモン環境の変化、他の感染症などをきっかけに微生物叢のバランスが乱れる(ディスバイオーシス)と、菌量が増加し、炎症や症状の発現に関与する可能性が指摘されています。
近年では、ホミニスやウレアプラズマは、単なる常在菌でも、単純な病原菌でもなく、宿主や微生物叢(マイクロバイオーム)との相互作用によって病原性が変化する微生物として理解されるようになっています。
Q2. どんな人が検査対象ですか?
A2
検査は、主に尿道炎、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患などの症状や炎症所見がある場合に行われます。
米国・欧州の性感染症ガイドラインでは、「無症候スクリーニングは原則推奨しない」とされており、無症状な場合には通常検査対象にはなりません。
一般に次のような症状がある場合には、マイコプラズマ・ウレアプラズマ同定検査が考慮されます。
- 男性:尿道の違和感、排尿時痛、尿道からの分泌物など尿道炎が疑われる場合
- 女性:おりものの増加や異臭、腟・外陰部のかゆみや違和感、排尿時の痛み、下腹部痛、性交時痛など子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患が疑われる場合
特に、淋菌やクラミジアが検出されないにもかかわらず尿道炎や子宮頸管炎の症状が続く場合には、マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査が推奨されます(保険診療)。
症状がある場合でもマイコプラズマ・ウレアプラズマ4菌種の同定検査は保険適用外(自費診療)です。
また、一部の医療施設においては、不妊症検査やブライダルチェック、プレコンセプションチェックの一環としてマイコプラズマ・ウレアプラズマ4菌種の検査を自費診療で提供しています。
Q3. 治療しなくても自然に治りますか?
A3
自然消失することはあります。
「自然にいなくなってしまう可能性があるのなら、治療しなくてもいいのでは?」と考える方も多いと思います。マイコプラズマ・ジェニタリウムの研究からは、無症候性感染者は6か月で15~30%、12か月で30~50%が自然消失するとの報告があります。
ただし研究によって結果に幅があり、平均感染持続期間は約3.5~15か月と推定されています1)。しかしながら、1年以上の持続感染も少なくないため、持続感染では尿道炎、子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患などのリスクが高まることが知られています。
よって、米国・欧州の性感染症ガイドラインでは、「マイコプラズマ・ジェニタリウムは、検出されたら治療を考慮する」という立場です。
一方、ホミニスやウレアプラズマについても、自然に検出されなくなる例がみられることが報告されていますが、その頻度については十分なデータがなく、明確には分かっていません。
さらに、性行動やパートナー間伝播(いわゆるピンポン感染)によって再定着する可能性もあると考えられています。これらの菌は、一度検出されても必ずしも持続的に検出されるわけではなく、菌量の変動に伴って検出・非検出を繰り返している可能性があります。
1) Timo Smieszek, Peter J White. Apparently-Different Clearance Rates from Cohort Studies of Mycoplasma genitalium Are Consistent after Accounting for Incidence of Infection, Recurrent Infection, and Study Design. PLoS One. 2016; 11: e0149087.
Q4. 将来的に何か困ったことになりますか?
A4
男女ともに不妊症との関連が示唆されています。女性では、絨毛膜羊膜炎による早産、前期破水と関連があると考えられています。
本文にも記載しましたが、これらの菌には以下の疾患に関連するポテンシャルを有することが示されています。ただし、因果関係が明確に証明されているわけではありません。
- マイコプラズマ・ホミニス: 男性不妊、細菌性腟症、慢性子宮内膜炎、早産、前期破水、低出生体重児、産後感染症、骨盤内膿瘍、新生児感染症
- ウレアプラズマ・ウレアリチカム: 男性不妊、慢性前立腺炎、細菌性腟症、慢性子宮内膜炎、早産、新生児感染症
- ウレアプラズマ・パルバム: 男性不妊、細菌性腟症、早産、新生児感染症
マイコプラズマ・ウレアプラズマが腟、子宮頸部から上行性に炎症が波及すると、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎と進行し、卵管閉塞をきたすことがあります。
また、これらは慢性子宮内膜炎の原因ともなります。慢性子宮内膜炎により子宮内微生物叢が乱れると(ディスバイオーシス)、反復着床不全、反復流産、体外受精の成績低下に関連することが報告されています。
男性不妊症の場合もホミニスやウレアプラズマが検出されることがあります。これらが検出された男性は精子数が少なく、精子の運動率も低いという結果が報告されています。
ホミニスやウレアプラズマは、絨毛膜羊膜炎の原因となり、前期破水や早産と関連しています。妊娠中の上行性感染や分娩時の産道通過により母体から児へ垂直感染することが知られています。保菌母体から新生児への垂直感染率は、おおむね18~55%程度とされています。
垂直感染した新生児の多くは無症候性のまま経過します。しかし、一部ではこれらの菌は強い炎症反応に関与し、胎児炎症反応症候群や早産児の肺・脳障害との関連が指摘されています。
Q5. 治療してもなかなか治らない場合がありますか?
A5
①薬剤耐性菌の可能性、②パートナーとのピンポン感染の可能性、③再検査の時期が早すぎる可能性があります。
治療後も同じ菌が陽性のままのことがしばしばあります。この場合、以下の3つの理由が考えられます。
- ① 薬剤耐性菌の可能性
- ② パートナーとのピンポン感染の可能性
- ③ 再検査の時期が早すぎる可能性
①については、ジェニタリウムでは、薬剤耐性が問題となっており、ガイドラインで推奨された治療法を行ってもその有効性は約90%です。ある一定の頻度で失敗例があることを認識しておく必要があります。
また、ジェニタリウム以外の菌種に対しては推奨された治療法はありません。実臨床ではビブラマイシンがよく使用されますが、これも有効性は明確にはされていませんし、今後、薬剤耐性が問題になる可能性もあります。
②は、性感染症がなかなか治らない原因として考えておく必要があります。特にマイコプラズマ・ウレアプラズマは、自覚症状が軽微であることが多いため、パートナーの自発的な受診行動が期待できない可能性があります。治療を行う際には、再感染予防の観点からパートナーの検査や同時治療についても検討が必要です。
③は、ジェニタリウムの再検査の時期は、「性感染症 診断・治療ガイドライン」では抗菌薬の内服終了後、男性の尿道炎に対しては2~4週間後に、女性の子宮頸管炎に対しては3~4週間以降に治療効果判定するのが適切とされています。
PCR法では、死滅した菌の遺伝子が存在しても陽性と判定されますので、検査時期が早すぎると偽陽性となる可能性があります。ジェニタリウム以外の菌種に対しての適切な再検査の時期は明確にされていませんが、同様に内服終了後3~4週間後が良いと思われます。
早く治癒を確認したいところですが、偽陽性のこともあるため再検査は推奨される時期に行うほうが良いでしょう。
Q6. 不妊症のオプション検査やブライダルチェック・プレコンセプションチェックで検査陽性の場合はどうしたら良いですか?
A6
「マイコプラズマ・ジェニタリウムは原則治療対象になりますが、それ以外の菌種に対しては、無症状であれば原則として治療は推奨されない」というのが米国・欧州のガイドラインの基本姿勢です。
この理由としては、本文にも記載しましたが、①性活動のある健常者での保菌率が高い、②保菌していても多くは無症状、③検出=病原菌とは限らない、④治療しても再保菌が多い、⑤不必要な抗菌薬使用は耐性化を促進する、などがあげられます。
マイコプラズマ・ウレアプラズマは慢性子宮内膜炎、骨盤内炎症性疾患さらに精液所見異常との関連が報告されています。しかし、因果関係はまだ十分証明されていません。そのため、「検出されたから治療すれば妊娠率が向上する」というエビデンスはありません。
しかし、実際の生殖補助医療(不妊症)の現場の対応は大きく3派に分かれます。
- 非治療派:ガイドラインに従い、無症状なら経過観察とする。
- 条件付き治療派(中間):慢性子宮内膜炎疑い、反復着床不全、反復流産などの既往や体外受精前などの場合に治療する施設もあります。不妊症との因果関係は完全には証明されていませんが、除菌による不利益(副作用など)は比較的小さいため先に治療をしておこうとする考え方です。
- 積極的治療派:妊娠前にリスク因子は除去したいという考え方で、一部の医療施設や医師でみられます。無症候保菌の状態であっても将来的に病原性を発揮するような可能性がある菌であれば、積極的に治療したほうが良いとの考え方です。特に、ホミニスやウレアリチカム陽性なら治療を行う医療施設もあるようです。
これらの考え方は、施設方針や医師の判断による部分が大きく、標準的な考え方とは異なります。妊娠を希望する方がホミニスやウレアプラズマ陽性の場合は、担当医と十分相談し、治療による利益と不利益を理解したうえで方針を決めることが大切です。
おわりに
今回のテーマであるマイコプラズマ・ウレアプラズマは、菌種によって臨床的な位置づけが大きく異なります。現在、性感染症の原因微生物として病原性が明確に確立しているのはマイコプラズマ・ジェニタリウムです。
一方、ホミニスやウレアプラズマへの対応は医療機関や医師によって異なる場合があります。これは、これらの菌が常在菌でありながら条件によって病原性が変化する微生物とされていることから、その臨床的な位置づけが必ずしも単純ではないことを物語っています。
今後、基礎研究および臨床研究のさらなる蓄積により、これらの微生物の病原性や各種疾患との関連についての理解が深まることが期待されます。
近年では、さまざまな疾患の発症や病態の進展は、特定の細菌単独によるものではなく、微生物叢(マイクロバイオーム)全体のバランスと、それに対する宿主の免疫応答との相互作用によって決まると考えられるようになっています。
マイコプラズマ・ウレアプラズマは健康女性にも比較的高率に検出されますが、乳酸桿菌優位の正常な腟内細菌叢が失われたディスバイオーシスの状態では菌量が増加しやすく、炎症や症状との関連が強まる可能性が示唆されています。
さらに、慢性子宮内膜炎や不妊症についても、子宮内および腟内マイクロバイオーム全体の構成や宿主との相互作用に注目した研究が増えています。
こうしたマイクロバイオーム研究は、マイコプラズマ・ウレアプラズマの臨床的意義を再評価するための新たな研究領域として注目されており、今後の研究の進展が期待されています。
2026年6月24日







