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【第3回】マイコプラズマ・ウレアプラズマ陽性時の治療の考え方について

病気について2026年8月5日

マイコプラズマ・ウレアプラズマ陽性時の治療の考え方について医師が解説

マイコプラズマ・ウレアプラズマ陽性時の治療の考え方

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、菌種や症状の有無、妊娠希望の有無などによって治療の考え方が異なります。陽性であっても一律に治療が必要とは限らず、患者さんそれぞれの状況に応じた慎重な判断が求められます。

*監修:予防会 名古屋クリニック院長

第1回では、マイコプラズマ・ウレアプラズマの基本情報、診断法、検出頻度について解説しています。

【第1回】基本情報・診断法・検出頻度について読む

第2回では、マイコプラズマ・ウレアプラズマの病原性と症状について解説しています。

【第2回】病原性と症状について読む

4.マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療の必要性は?

1)治療に対する考え方

前にも述べたように、米国・欧州の性感染症ガイドライン2, 3)では、マイコプラズマ・ジェニタリウムは病原性が確立しているため治療の対象となりますが、それ以外の菌種では「無症候性保菌に対しての治療は推奨されない」としています。

妊婦の場合も、欧州生殖医学会(ESHRE)はホミニスやウレアプラズマ保菌者に対して「無症候性保菌のみでは治療は推奨されない」としています20)。これは、「無症候性妊婦を治療することにより早産、前期破水を予防する」との明確なエビデンスが不足していることを理由にしています。

不妊症患者に対しても、欧州生殖医学会では、ルーチンの検査や治療は推奨していません21)。これも、「検査して治療すれば妊娠率や出生率が改善する」ことが証明されていないことが理由にあります。

しかし、これらのガイドラインでは、ホミニスやウレアプラズマの病原性を完全否定しているわけではなく、証拠が不十分としていることが重要な点です。

実臨床では検査で陽性となった場合、性別、年齢、ライフスタイル、症状の有無やその程度・持続期間、他の性感染症の検査結果、パートナーの状況、妊娠希望の有無、治療に対する考え方などを考慮しながら、それぞれの患者さんの状況に応じた対応が求められます。

2)マイコプラズマ・ホミニスやウレアプラズマで治療が検討される状況

治療が検討されるケース

検査陽性者で以下のような臨床状況の場合は治療が検討されることがあります。

① 症状がある場合

  • 尿道炎の症状があり、他の原因が除外されている
  • 子宮頸管炎の症状があり、他の原因が除外されている

② 生殖補助医療(不妊症)の場合

  • 原因不明不妊
  • 精液所見異常(精子数・運動性低下、白血球精液症)
  • 反復着床不全
  • 反復流産
  • 慢性子宮内膜炎が疑われる
  • 骨盤炎症性疾患の既往
  • 体外受精・胚移植前

③ 周産期医療(産科)の場合

  • 反復早産
  • 前期破水の既往
  • 絨毛膜羊膜炎の既往

④ その他:無症候性保菌でも治療希望がある場合

実際には検査陽性者に対する対応は、医療施設の方針や医師の専門性および考え方によりやや温度差があります。

②の場合は、無症状なら治療しない施設、体外受精・胚移植前に治療する施設、ウレアリチカムのみ重視する施設、パートナーも同時に治療する施設など様々に分かれます。

③の場合では妊娠中に使用可能な薬剤が制限されることから、妊娠前に治療の必要があるかどうか、慎重な対応が必要との意見があります。

④のケースは日常臨床で比較的多く遭遇します。

そもそも、無症候性かどうかは、「自覚症状の有無」、「炎症所見の有無」、ならびに「他の原因疾患の有無」を総合的に評価して判断されます。

無症候性保菌と無症候性感染

自覚症状に関しては、軽度の症状が見過ごされている可能性も考慮する必要があります。特に女性では、子宮頸管炎の初期にみられる帯下の増加や性状・においの変化について、その変化を自覚できるかどうかには個人差があります。もともと帯下は月経周期、ホルモン動態などの影響で変動するため、軽微な変化には気づきにくいこともあります。

炎症所見に関しても、例えば、子宮頸管炎では、尿道炎と比べて客観的で再現性の高い診断基準が確立されておらず、診断には医師の臨床的判断が必要となります。そのため、診断にばらつきが生じることもあります。

このように、無症候性保菌と症候性感染の区別があまり明確でない場合もあります。そのため、それぞれの状況に応じて治療の必要性を個別に検討する必要があります。

また、無症候性保菌の方の中には、「性感染症にかかった」と受け止め、不安や精神的ストレスを抱える方もいます。そのような場合には、無症候性保菌は必ずしも治療の対象とならないため、医学的適応に関して十分な情報提供と相談が必要です。

しかし、説明後も将来への不安やパートナーへの感染への懸念が強い場合には心理的負担も考慮に入れ、個別に治療を検討することがあります。

ただし、治療を受ける際には、治療後も再保菌する可能性があること、治療によって将来の不妊や妊娠合併症を確実に予防できることは証明されていないこと、さらに抗菌薬には副作用や薬剤耐性化のリスクがあることを十分に理解していただく必要があります。

5.マイコプラズマ・ウレアプラズマの実際の治療と問題点は?

実際の治療は、「性感染症 診断・治療ガイドライン 2026」1)に準拠して行われます。

治療に際しての最大の問題点は薬剤耐性の問題で、特にマイコプラズマ・ジェニタリウムの薬剤耐性は世界的な問題となっています。

これまで治療に使われていたマクロライド系薬剤(アジスロマイシンなど)やニューキノロン系薬剤(シタフロキサシンやモキシフロキサシンなど)の耐性化が世界的にすすんでおり、日本ではマクロライド耐性は70~90%、ニューキノロン耐性も15~25%とされています1)

ジェニタリウムの薬剤耐性

テトラサイクリン系薬剤(ドキシサイクリンなど)の耐性の上昇は確認されていませんが、テトラサイクリン単剤の有効性は35~60%程度とあまり高くありません1)

1)マイコプラズマ・ジェニタリウムに対する治療法

米国CDC性感染症ガイドライン2)や日本の性感染症 診断・治療ガイドライン20261)の推奨する治療法は以下のようにテトラサイクリン系薬剤に続けてニューキノロン系薬剤の2種類を使用する「逐次療法;シークエンシャル療法」です。

  • ①ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)7日間→モキシフロキサシン(アベロックス®)7日間
  • ②ミノサイクリン(ミノマイシン®)7日間→シタフロキサシン(グレースビット®)7日間

有効性は、①の方法で92%、②の方法ではおおむね90%と報告されています1,2)

ただし、モキシフロキサシン(アベロックス®)は日本では尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎などの泌尿器感染症には適用外であり自費診療となります。

逐次療法は、まずテトラサイクリン系薬剤で菌量を減少させ、その後にニューキノロン系薬剤を投与することで治療成功率の向上を図る治療法です22)

治療のオプション

2. 1)診断で述べたように、マイコプラズマ・ジェニタリウムおよびマクロライド耐性変異同時検出キットが使用可能であるため、治療前にマクロライド耐性変異を調べ、トリアージにより選択肢を決めることも可能です。

マクロライド耐性がある場合は、前述した①②の逐次療法を行います。

マクロライド耐性がない場合は、ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)投与後にアジスロマイシン(ジスロマック®)を投与する方法も選択肢になります1, 2)

その他のオプションとして以下の方法があげられていますが、いずれも有効性は90%以下です。

  • ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)単剤 7~14日間
  • ミノサイクリン(ミノマイシン®)単剤 7~14日間
  • シタフロキサシン(グレースビット®)単剤 7~14日間
  • モキシフロキサシン(アベロックス®)単剤 7~14日間(日本では保険適応外)
  • 高用量アジスロマイシン(ジスロマック®)単剤(日本では保険適応外)
  • テトラサイクリン系薬剤とニューキノロン系薬剤の同時併用療法

  例)ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)あるいはミノサイクリン(ミノマイシン®)7日間に併用してシタフロキサシン(グレースビット®)あるいはモキシフロキサシン(アベロックス®)7日間

2)マイコプラズマ・ジェニタリウム以外の菌種に対する治療法

米国・欧州の性感染症ガイドラインでは、ホミニスやウレアプラズマに対して推奨される薬剤は示されていません

実臨床では、過去の薬剤感受性などから得られたデータを参考にして以下の薬剤が用いられています。

①マイコプラズマ・ホミニス:ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)、ミノサイクリン(ミノマイシン®)、クリンダマイシン(ダラシン®)(妊婦の場合)、レボフロキサシン(クラビット®)、シタフロキサシン(グレースビット®)など

②ウレアプラズマ:ドキシサイクリン(ビブラマイシン®)、アジスロマイシン(ジスロマック®)、レボフロキサシン(クラビット®)、シタフロキサシン(グレースビット®)など

ホミニスはマクロライド系薬剤(アジスロマイシン®など)に自然耐性を示します。

3)治療上の問題点

ジェニタリウムの多剤耐性は年々変化しているため、現在行われている治療法の効果が低下した場合、新たな薬剤の開発や投与法の工夫が必要になる可能性があります。

マイコプラズマ・ウレアプラズマの治療はテトラサイクリン系薬剤がよく使用されますが、妊娠中は胎児へ影響(骨や歯)するため使用できません。よって、使用薬剤が限られるため治療の失敗、さらに症状の悪化により妊娠合併症や胎児への感染が懸念されます。

北米ではテトラサイクリン耐性6.5%、レボフロキサシン耐性6.7%が報告されており23)、今後の耐性の動向が注視されています。

今後、多剤耐性ウレアプラズマが出現した場合、投与抗菌薬が限られる妊婦や新生児にとって大きな問題になることが懸念されています。

まとめ

・マイコプラズマ・ジェニタリウムは病原性が確立しているため、治療の対象となります。

・マイコプラズマ・ホミニスやウレアプラズマでは、無症候性保菌のみでの一律の治療は推奨されていません。

・ただし、症状の有無、炎症所見、妊娠希望、不妊治療、パートナーの状況などにより、個別に治療が検討されることがあります。

・治療を行う場合でも、再保菌、副作用、薬剤耐性化のリスクを理解する必要があります。

・特にマイコプラズマ・ジェニタリウムでは、薬剤耐性が世界的な問題となっています。

次回のコラムについて

次回は、マイコプラズマ・ウレアプラズマのよくある質問について解説します。

参考文献を見る

1) 性感染症 診断・治療ガイドライン 2026. 日本性感染症学会編. P109-123.
2) CDC. Sexually Transmitted Infection Treatment Guidelines 2021. Mycoplasma genitalium.
3) Horner P, Donders G, Cusini M, et al. Should we be testing for urogenital Mycoplasma hominis, Ureaplasma parvum and U. urealyticum in men and women? – a Position Statement from the European STI Guidelines Editorial Board. JEADV. 2018; 32: 1845–1851.
20) The ESHRE Guideline Group on RPL; Ruth Bender Atik, Ole Bjarne Christiansen, Janine Elson, et al. ESHRE guideline: recurrent pregnancy loss: an update in 2022.
21) Guideline Group on Unexplained Infertility; Romualdi D, Ata B, Bhattacharya S, et al. Evidence-based guideline: unexplained infertility. Hum Reprod. 2023; 38:1881-1890.
22) Read TRH, Fairley CK, Murray GL, et al. Outcomes of Resistance-guided Sequential Treatment of Mycoplasma genitalium Infections: A Prospective Evaluation. Clin Infect Dis. 2019; 68: 554-560.
23) Waites JT, Crabb DM, Ratliff AE et al. Antimicrobial susceptibility and genetic mechanisms of resistance of Ureaplasma isolates in North America between 2012 and 2023. Antimicrob Agents Chemother. 2025; 69: e0186824.

予防会 名古屋クリニック院長

監修者 医師監修

予防会 名古屋クリニック院長

日本産科婦人科学会・産婦人科専門医

日本女性医学学会・女性ヘルスケア専門医

日本婦人科腫瘍学会・婦人科腫瘍専門医

日本がん治療認定医機構・がん治療認定医

日本臨床細胞学会・細胞診専門医

日本臨床細胞学会・教育認定指導医

日本母体保護法指定医

日本医師会認定産業医

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