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【第1回】マイコプラズマ・ウレアプラズマとは?基本情報・診断法・検出頻度について
病気について2026年6月26日
マイコプラズマ・ウレアプラズマとは?基本情報・診断法・検出頻度について医師が解説

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、性感染症の検査項目として目にする機会が増えている一方で、菌種によって病原性や治療の必要性に対する考え方が異なる、複雑な微生物です。
今回のテーマであるマイコプラズマ・ウレアプラズマに関する情報は、以前から予防会のコラムでも紹介しており、各医療機関のホームページでも情報提供されていますので既にご覧になった方も多いと思いますが、まだまだ認知度が低い菌です。
マイコプラズマ・ジェニタリウムは病原菌としての重要度は確立しているものの1)、それ以外のマイコプラズマ・ウレアプラズマは、症状がない無症候性保菌も多いため、「単なる保菌か、病原性があるのか」、「治療の必要性はあるのか」、「そもそも性感染症ではないのでは」など以前より色々な議論が続いています。
現在、米国CDC性感染症ガイドライン2)や欧州性感染症ガイドライン編集委員会3)では、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外の菌種は無症候性保菌が非常に多く、病原性のエビデンスが不十分(一貫性がない)なため、「無症候スクリーニングは原則推奨しない、無症候保菌への一律の治療は推奨しない」との立場を取っています。
しかしながら、自覚症状も含めて無症候性かどうかの評価は必ずしも明確ではなく、判断に迷う場合も少なくありません。過剰な検査や治療は避けるべきですが、「マイコプラズマ・ジェニタリウム以外は症状がなければ治療は不要」と一律に決められないこともあり、実際には、患者さんそれぞれの状況に応じて慎重な対応が求められます。
本コラムでは、捉えどころのない菌であるマイコプラズマ・ウレアプラズマについて現在までの知見を整理するとともに、未解明の点や今後の問題点についても解説します。
第1回では、マイコプラズマ・ウレアプラズマの基本情報、診断法、検出頻度について解説します。
*監修:予防会 名古屋クリニック院長
1. マイコプラズマ・ウレアプラズマとは?
マイコプラズマやウレアプラズマは、サイズが一般の細菌の約1/10と非常に小さな細菌で、一般的な顕微鏡では観察できません。
マイコプラズマと言うとマイコプラズマ肺炎が有名ですが、原因菌のマイコプラズマ・ニューモニエはマイコプラズマ・ジェニタリウムと遺伝学的に近い関係とされています。
これらは生体内で泌尿生殖器の粘膜上皮に付着して生存し、宿主(ヒト)から供給される栄養素や代謝産物を利用して増殖します。
また、ウレアプラズマは尿素(ウレア)を代謝してエネルギーを得る特徴を持つため、尿や胎児尿由来の尿素を含む羊水はウレアプラズマが生存しやすい環境と考えられています。
一般的な細菌とは異なり、細胞壁を持たないという特徴があります。そのため、細胞壁合成阻害薬であるペニシリン系やセフェム系などよく使用されるβラクタム系抗菌薬に対しては自然耐性を有しています。
泌尿生殖器に定着し、検査や治療の対象となる菌には以下の4種類があります。
- マイコプラズマ・ジェニタリウム
- マイコプラズマ・ホミニス
- ウレアプラズマ・ウレアリチカム
- ウレアプラズマ・パルバム

2. マイコプラズマ・ウレアプラズマの診断法について
細菌検査で行われる培養検査はとても困難で特殊な場合を除いて行われません。
診断は主に核酸増幅検査(PCRなどの遺伝子検査)で行われます。

2022年6月にマイコプラズマ・ジェニタリウムのみ腟トリコモナス/マイコプラズマ・ジェニタリウム同時核酸増幅検査が尿、腟擦過物、子宮頸管擦過物を検体として保険適用とされています。
一方、マイコプラズマ・ウレアプラズマの4菌種同時のmultiplex PCRは保険適用外(自費診療)です。検体は尿、腟分泌物(子宮頸管擦過物)、咽頭ぬぐい液が用いられます。
また、マイコプラズマ・ジェニタリウムとマクロライド耐性変異を同時に検出できる検査法も導入されており、日本では2025年1月から保険適用となっています。
ジェニタリウムでは、マクロライド系抗菌薬に対する耐性化が世界的に進んでいるため、治療開始前にマクロライド耐性変異の有無を確認することでより適切な抗菌薬の選択に役立ちます。
3. 世界での検出頻度

世界各国の一般集団を対象とした疫学研究を総合すると、男女別の検出頻度はおおよそ以下のように考えられています。
| 菌種 | 男性の検出率 | 女性の検出率 |
|---|---|---|
| マイコプラズマ・ジェニタリウム | 1〜3% | 1〜3% |
| マイコプラズマ・ホミニス | 2〜10% | 20〜50% |
| ウレアプラズマ・ウレアリチカム | 5〜15% | 10〜30% |
| ウレアプラズマ・パルバム | 10〜40% | 20〜60% |
検出率は、地域、人種、年齢、性行動の状況、検査部位、検査法などの影響を受けるため、各報告の結果を一律に比較することには無理があります。
ジェニタリウムの検出率は、一般男女の1〜3%程度であるのに対し、ホミニスやウレアプラズマ属は高頻度に検出され、男性では数%〜50%、女性では20〜80%の検出率とされています。特にパルバムは最も高頻度です4)。
ホミニスやパルバムの検出率は女性のほうが高いとされています4)。
4. 日本人男性における検出頻度
日本人一般人口の正確な男女別保菌率は大規模な調査研究がないため不明です。
無症状の若年男性(100例)を対象とし、尿検体を用いた調査研究結果を示します5)。
| 微生物 | 検出率 |
|---|---|
| クラミジア | 6% |
| マイコプラズマ・ジェニタリウム | 1% |
| マイコプラズマ・ホミニス | 4% |
| ウレアプラズマ・ウレアリチカム | 12% |
| ウレアプラズマ・パルバム | 23% |
この結果は、先に述べた世界各国の一般男性での検出率とほぼ同じで、ウレアプラズマの検出率はやや高く、性行動と関連があると述べられています。
5. 日本人女性における腟および咽頭での検出頻度
一般集団を対象にした咽頭での検出率については、信頼性の高いデータはありません。
日本での無症状の女性性産業従事者(403例)を対象とし、腟分泌物および咽頭ぬぐい液を用いた調査研究結果を示します6)。
| 微生物 | 腟検体での検出率 | 咽頭検体での検出率 |
|---|---|---|
| 淋菌 | 1.7% | 4.0% |
| クラミジア | 7.2% | 2.0% |
| マイコプラズマ・ジェニタリウム | 1.7% | 0% |
| マイコプラズマ・ホミニス | 19.6% | 1.2% |
| ウレアプラズマ・ウレアリチカム | 10.2% | 0.7% |
| ウレアプラズマ・パルバム | 40.4% | 0.2% |
この結果については、①咽頭の淋菌およびクラミジア感染は、性器の淋菌およびクラミジア感染と関連している。②ホミニス、ウレアリチカム、パルバムの咽頭検体での検出率は1%前後で、腟検体での検出率と比較して低い。③この研究ではジェニタリウムは咽頭からは検出されなかったが、オーラルセックスによる咽頭から尿道への感染伝播の可能性は否定できないとされています。
マイコプラズマ・ウレアプラズマは泌尿生殖器に適応した菌であり、咽頭はあまり適した定着部位ではないと考えられています。
ジェニタリウムの咽頭感染に関する研究は、主に男性間性交渉者を対象に行われており、咽頭からの検出率はおおむね1%前後(0.5〜2%)とされています7)。
ジェニタリウムの咽頭感染については、尿道や子宮頸管と比較すると感染伝播への関与は小さい可能性が指摘されています。
ホミニスやウレアプラズマも咽頭から検出されることがありますが、その多くは無症状で、感染源としての重要性については不明確です。
6. まとめ
・マイコプラズマ・ウレアプラズマは、泌尿生殖器に定着する非常に小さな細菌です。
・検査や治療の対象となる菌には、マイコプラズマ・ジェニタリウム、マイコプラズマ・ホミニス、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、ウレアプラズマ・パルバムがあります。
・診断は主に核酸増幅検査(PCRなどの遺伝子検査)で行われます。
・マイコプラズマ・ジェニタリウム以外の菌種では、無症候性保菌も多く、検出されたことだけで病原性や治療の必要性を判断することはできません。
・検出率は、地域、人種、年齢、性行動の状況、検査部位、検査法などによって影響を受けます。
・咽頭から検出されることもありますが、性器・尿道と比較すると検出率は低く、感染源としての重要性については不明確です。
次回のコラムについて
次回は、マイコプラズマ・ウレアプラズマの病原性と症状について解説します。
1) 性感染症 診断・治療ガイドライン 2026. 日本性感染症学会編. P109-123.
2) CDC. Sexually Transmitted Infection Treatment Guidelines 2021. Mycoplasma genitalium.
3) Horner P, Donders G, Cusini M, et al. Should we be testing for urogenital Mycoplasma hominis, Ureaplasma parvum and U. urealyticum in men and women? – a Position Statement from the European STI Guidelines Editorial Board. JEADV. 2018; 32: 1845–1851.
4) Tatiana Rumyantseva, Guzel Khayrullina, Alexander Guschin, et al. Prevalence of Ureaplasma spp. and Mycoplasma hominis in healthy women and patients with flora alterations. Diagn Microbiol Infect Dis. 2019; 93: 227-231.
5) Takahashi S, Takeyama K, Miyamoto S, et al. Detection of Mycoplasma genitalium, Mycoplasma hominis, Ureaplasma urealyticum, and Ureaplasma parvum DNAs in urine from asymptomatic healthy young Japanese men. J Infect Chemother. 2006; 12: 269-271.
6) Deguchi T, Yasuda M, Yokoi S, et al. Failure to detect Mycoplasma genitalium in the pharynges of female sex workers in Japan. J Infect Chemother. 2009; 15: 410-413.
7) Rosie L Latimer, Hannah S Shilling, Lenka A Vodstrcil, et al. Prevalence of Mycoplasma genitalium by anatomical site in men who have sex with men: A systematic review and meta-analysis. Sex Transm. Infect. 2020; 96: 563-570.







