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性交痛が続くのに「異常なし」?Vulvodynia(外陰部疼痛症候群)とは
病気について2026年10月16日
性交痛が続くのに「異常なし」?Vulvodynia(外陰部疼痛症候群)とは

「性交するとデリケートゾーンが痛い」
「カンジダの治療は終わったのに、痛みだけが残っている」
「婦人科で検査を受けても異常が見つからない」
そんな原因のわからない外陰部の痛みには、Vulvodynia(外陰部疼痛症候群)という疾患が隠れていることがあります。
Vulvodyniaは日本ではまだあまり馴染みがなく、専門的に診療している医療機関も多くありません。しかし、有病率は12%とも推定されており、決して珍しい疾患ではありません。
新宿サテライトクリニックではデリケートゾーン専門外来を実施しており、実際にVulvodyniaと考えられる患者さんを診察することがあります。
今回は、Vulvodyniaとはどのような疾患なのか、症状や診断、治療について、当院で経験した症例とともに解説します。
*監修:新宿サテライトクリニック院長 北岡一樹(M.D./Ph.D.)
1. Vulvodynia(外陰部疼痛症候群)とは?

Vulvodyniaとは、外陰部の痛みが3か月以上続いているにもかかわらず、その痛みを説明できる明らかな原因が特定できない状態です。
例えば、外陰部の痛みを引き起こすことのあるカンジダ膣炎、性器ヘルペス、硬化性苔癬などを確認し、それらでは痛みを説明できない場合にVulvodyniaが疑われます。
日本語ではさまざまな表記がありますが、「外陰部疼痛症候群」と呼ばれることがあります。
有病率は12%とも推定されていますが、症状があっても医療機関を受診しなかったり、受診しても別の疾患と判断されたりすることがあるため、十分に知られていない疾患です。
Vulvodyniaはなぜ起こる?
Vulvodyniaの原因は、まだ完全には解明されていません。
- 過剰な免疫反応
- カンジダ
- 筋膜障害
- メンタルの影響
など、複数の要因が複合的に関係しているとされています。
「原因がわからない=痛みが存在しない」ということではありません。
外見上の異常や検査で明らかな原因が見つからなくても、実際に外陰部の痛みに悩んでいる方がいます。
2. Vulvodyniaの症状と診断

特徴的な症状は、外陰前庭部に触れたときに生じる鋭い痛みです。
特に性交時の痛み(性交痛)として自覚されることがありますが、性交するときだけに痛むとは限りません。
- 締め付けの強い衣服を着る
- 長時間座っている
- 自転車に乗る
- スポーツをする
といった日常生活の中でも痛みを感じることがあります。
診断のポイント
Vulvodyniaの診断ポイント
・外陰部前庭領域(大まかには膣・尿道周囲)に局在する痛み
・少なくとも3か月以上続いている
・点圧試験によって痛みが誘発される
・痛みを説明できる特定の原因がない
つまり、単に「外陰部が痛い」というだけでVulvodyniaと診断するわけではありません。他に痛みを引き起こしている病気がないかを調べることが重要です。
「点圧試験」で痛みの場所を確認
診察では「点圧試験」を行い、膣前庭領域のどこに痛みがあるのかを確認します。
特に、膣口を時計の文字盤に見立てたときの4時~8時方向において、接触圧に対する強い痛みがみられることが多いです。
専門的な検査の名前を見ると難しく感じるかもしれませんが、「どこに触れると、どの程度痛いのか」を確認していく検査と考えるとイメージしやすいでしょう。
3. Vulvodyniaとカンジダの関係

Vulvodyniaの診断を難しくしている理由の一つが、外陰部の痛みを引き起こす他の疾患と併存することがある点です。
特にカンジダ膣炎は、Vulvodyniaの誘因になっていることもあります。
こんな経過をたどることがあります
カンジダ膣炎と診断される
↓
治療を受ける
↓
カンジダは改善する
↓
それでも外陰部の痛みが続く
「カンジダが治ったのだから、痛みもそのうち治るだろう」と考えてしまうかもしれません。しかし、カンジダなど併存している疾患を治療しても外陰部痛が続いている場合には、Vulvodyniaを含め、別の原因についても検討する必要があります。
4. Vulvodyniaの治療

Vulvodyniaの第一選択治療は骨盤底理学療法です。
骨盤底理学療法とは、骨盤の底にある筋肉(骨盤底筋)などにアプローチする治療です。
その他、薬物療法や手術なども検討されていますが、明確なエビデンスは出ていません。
Vulvodyniaは原因が完全には解明されておらず、症状や背景も患者さんによって異なります。そのため、まずはカンジダ膣炎、性器ヘルペス、皮膚疾患など、外陰部の痛みを引き起こす他の疾患がないかを確認したうえで、治療方針を検討していきます。
5. 当院で経験したVulvodyniaの症例

ここからは、当院で実際に経験した症例をご紹介します。
26歳・女性
ご本人の症状
- 性交痛(一度自然に治まるも再発)
- かゆみ(カンジダ膣炎と診断)
- カンジダ治療後も残る痛み
- 「ピリッ」とするような鋭い痛み
- 膣口付近(4時方向)の圧痛
当院を受診するまでの経過
最初に気になった症状は性交痛でした。しばらく様子を見ていたところ、約1か月で自然に痛みが治まりました。
ところが、その約1か月後に再び性交痛とかゆみが出現しました。近くの産婦人科を受診したところ、カンジダ膣炎と診断され、治療を受けました。
カンジダは陰性。それでも痛みが残った
治療から1週間ほど経っても痛みが残っていたため、再び産婦人科を受診しました。今度はカンジダ陰性。その他の検査でも異常がなかったため、経過観察となりました。
しかし、その後も性交痛が続いたため、デリケートゾーン専門外来を行っている新宿サテライトクリニックを受診しました。
当院での診察
診察では、性器ヘルペスを含めて見た目に明らかな異常はありませんでしたが、膣口付近に圧痛を認めました。その他の性感染症検査も陰性でした。
カンジダ膣炎については検査が陰性でも否定できないため、抗真菌薬を処方し、経過を見ることとなりました。
「ピリッ」とするような鋭い痛み
その後も性交痛が治まらず、再度当院を受診されました。詳しく確認すると、患者さんが感じていたのは「ピリッとするような感覚」でした。
そこで点圧試験を行ったところ、膣口を時計の文字盤に見立てた「4時方向」に圧痛を認めました。
診断に至ったポイント
・痛みが3か月以上続いている
・点圧試験で痛みが確認された
・性器ヘルペス、皮膚炎、カンジダ、その他の性感染症など、外陰部痛を引き起こす他の疾患が否定された
以上のことから、Vulvodyniaと診断しました。
その後、第一選択となる骨盤底理学療法を受けるため、対応可能な医療機関へ紹介しました。
症状が一度治まることも
今回の症例で注目したいポイントの一つが、痛みが自然に改善することもあるという点です。
今回の患者さんも、振り返ってみると「今までもたまに同じようなことがあった」と話していました。症状が一時的に治まることで、そのまま受診せず、実際には見過ごされているケースもあると考えられます。
カンジダと併存することも
もう一つのポイントが、カンジダ膣炎と併存することがあるという点です。
Vulvodynia自体がカンジダによって引き起こされる可能性もあります。今回の患者さんもカンジダ膣炎と併存しており、カンジダ膣炎の治療によって症状が改善した時期がありました。
痛みが「性交への怖さ」につながることも
今回の患者さんが感じていたのは「鋭い痛み」でした。そして、性交時の痛みが続いたことで、性交そのものに怖さを感じるようになっていました。
Vulvodyniaは単に外陰部が痛むだけではなく、性生活にも影響を与える可能性があります。
6. Vulvodynia(外陰部疼痛症候群)についてよくある質問

Q1.Vulvodyniaとはどんな病気ですか?
Vulvodyniaとは、外陰部の痛みが3か月以上続いているにもかかわらず、その痛みを説明できる明らかな原因が特定できない状態です。カンジダ膣炎、性器ヘルペス、硬化性苔癬など、外陰部痛を引き起こす他の疾患を確認したうえで診断を検討します。
Q2.Vulvodyniaではどんな痛みが出ますか?
特徴的なのは、外陰部、特に膣の入口周辺に触れたときに生じる鋭い痛みです。性交時だけでなく、締め付けの強い衣服を着たとき、長時間座っているとき、自転車に乗ったとき、スポーツをしたときなどに痛みを感じることもあります。
Q3.性交痛があるのに検査で異常がない場合、Vulvodyniaの可能性はありますか?
可能性の一つとして考えられます。Vulvodyniaでは、性器ヘルペスやカンジダ、皮膚疾患など、外陰部痛の原因となる他の疾患が確認されないにもかかわらず、痛みが続くことがあります。ただし、性交痛にはさまざまな原因があるため、症状だけでVulvodyniaと自己判断することはできません。まずは医療機関で診察・検査を受け、他の原因がないかを確認することが大切です。
Q4.カンジダが治ったのに痛みが残ることはありますか?
カンジダ膣炎の治療後も外陰部痛が続く場合があります。Vulvodyniaはカンジダ膣炎など他の疾患と併存することがあり、カンジダがVulvodyniaの誘因となる可能性もあります。カンジダの治療後も痛みが続いている場合には、別の原因についても検討する必要があります。
Q5.Vulvodyniaはどのように診断しますか?
痛みが3か月以上続いていること、点圧試験によって痛みが誘発されること、痛みを説明できる他の原因が特定できないことなどから診断を検討します。診察では膣前庭領域を軽く押して痛みを確認する「点圧試験」を行います。特に、膣口を時計の文字盤に見立てたときの4時~8時方向で強い痛みがみられることが多いです。
Q6.Vulvodyniaはどのように治療しますか?
第一選択となるのは骨盤底理学療法です。その他、薬物療法や手術なども検討されていますが、明確なエビデンスは出ていません。
Q7.Vulvodyniaは自然に治ることがありますか?
症状が自然に改善することもあります。今回紹介した症例でも、一度性交痛が自然に治まった時期がありました。そのため、症状が一時的に改善し、そのまま受診せずに見過ごされているケースもあると考えられます。
Q8.Vulvodyniaは珍しい病気ですか?
日本ではまだあまり知られていませんが、有病率は12%とも推定されています。受診に至らないケースや、受診しても別の疾患と判断されるケースがあるため、十分に知られていない疾患です。
Q9.原因不明の性交痛や外陰部痛はどこに相談すればよいですか?
原因不明の外陰部痛や性交痛が続いている場合には、外陰部の疾患を診療できる医療機関へ相談してください。新宿サテライトクリニックではデリケートゾーン専門外来を実施しており、Vulvodyniaの患者さんを診察することがあります。
7. まとめ|「原因がわからない痛み」もご相談ください

Vulvodyniaは、日本ではまだあまり知られていない疾患です。
当院でも年に数例、Vulvodyniaの患者さんを診察しています。有病率から考えると、実際にはさらに多くの方が症状を抱えている可能性があります。
特に当院では、カンジダ膣炎の治療後も外陰部の痛みが残っていることをきっかけに見つかるケースがあります。
「カンジダを治療したのに痛い」
「性交するといつも痛い」
「検査では異常がないと言われたのに痛みが続いている」
このような症状がある場合には、Vulvodyniaを含め、別の原因がないか確認することも大切です。
原因のわからない外陰部痛や性交痛でお悩みの場合は、デリケートゾーン専門外来へご相談ください。
・Vulvodyniaは、外陰部の痛みが3か月以上続き、明らかな原因が特定できない状態
・有病率は12%とも推定されているが、日本ではまだあまり知られていない
・診断には点圧試験で痛みを確認し、他の疾患を除外することが重要
・カンジダ膣炎と併存することがあり、カンジダ治療後も痛みが続く場合は別の原因の検討が必要
・第一選択治療は骨盤底理学療法
・原因のわからない外陰部痛や性交痛は、デリケートゾーン専門外来へ相談を
参考文献
本記事は、以下のUpToDateの項目を基に作成しています。
・UpToDate: Vulvar pain of unknown cause (vulvodynia): Clinical manifestations and diagnosis
・UpToDate: Vulvar pain of unknown cause (vulvodynia): Treatment

















