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意外と知られていない細菌性腟症|繰り返さないための対策

病気について2026年3月18日

意外と知られていない細菌性腟症


「おりものの質が変わった」、「なんだか臭いがきつくなった」といったような症状があるときは、細菌性腟症の可能性があります。

細菌性腟症とは、性感染症や細菌性腟炎とは異なり、腟のかゆみや痛みなどの症状よりも、おりものの量や臭いの方の症状が強いのが特徴で、放置しているとちょっと厄介なことになる・・・という病気です。

1 細菌性腟症とは?

細菌性腟症は、以前は非特異的腟炎と呼ばれ、性感染症の原因菌以外の菌によって起こる腟炎と考えられていました。

現在は、腟の善玉菌である乳酸桿菌(ラクトバチルス属の菌)が減少して、代わりにガードネレラ属の菌、ヘモフィルス属の菌、嫌気性菌やマイコプラズマ属、ウレアプラズマ属などが過剰に増殖し、これら複数の菌が「バイオフィルム」というものを形成して起こる病態として考えられています。

腟の善玉菌である乳酸桿菌は、腟内に多く存在するグリコーゲンを栄養源として乳酸を産生し、腟内を酸性(pH:3.8~4.5)に保ちます。病原菌の多くはこの酸性環境では増殖できないためこれが防御となります。また、一部の乳酸桿菌は消毒液の成分として知られる過酸化水素(H₂O₂)やバクテリオシン(抗菌性ペプチド)を産生することにより有害な病原菌の増殖をさらに抑えます。

これを「腟の自浄作用」といいますが、何らかの原因で乳酸桿菌が減ると腟内の酸性度が低下し、病原菌が繁殖して腟内の細菌叢(フローラ)が乱れ、病原菌がタンパク質を分解して産生する物質(アミン)やアンモニアなどによって、不快なにおいが発生します。

この状態が細菌性腟症とされています1, 2)。

図:腟の自浄作用(病気が見えるVol.10産科 第4版. P173 図引用)
図:腟の自浄作用(病気が見えるVol.10産科 第4版. P173 図引用)


2 症状

細菌性腟症は、女性全体の10~30%が罹患していると言われています。おりものの性状は、灰色のスキムミルク様で多く、不快なにおいが細菌性腟症の特徴的な症状です。

おりものの増加が44%、下腹部痛が34%、不正出血が22%に見られるとされていますが、半数は無症状との報告もあります。

細菌性腟炎の時と比べて、痛み、痒み、排尿時の違和感などの症状は軽度です。

腟内で異常に増殖した病原細菌が、子宮や卵管、骨盤内へ上行性感染すると、子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎などが起こり、不妊症の原因になることも指摘されています。

また、細菌性腟症はHIV、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染や他の性感染症の感染 ・ 発症のリスクを高めるとされています1, 2)。


3 細菌性腟症の発症リスクと原因説 

「細菌性腟症は性行為によって発症する」という論文が数多く存在するにもかかわらず、この説はまだ一般的に認知されていません。

その理由は、従来の性感染症(淋菌・クラミジア・梅毒など)とは違う機序で発症すると考えられているからです。

<仮説1:腟内射精による腟内酸性度の変化が原因?>

健康な腟は、乳酸桿菌の働きによって酸性(pH:3.8~4.5)に保たれており、自浄作用があることを説明しました。

しかし、この酸性の指標であるpHが4.5以上になると、有意に雑菌が増えるという報告があります3)。

では、腟の酸性が保てなくなる原因とは何でしょうか?

一つの仮説に、射精液の主成分であるアルカリ性の前立腺液が腟内に入ると、腟内のpHが上昇し、性行為後8時間まで上昇したままであるという報告があります 4)。

腟内のpHが上昇することで、嫌気性菌が繁殖しやすい環境になり、細菌性腟症を発症するのではないか?というものです。

そこでコンドームを使用し腟内に射精しなければ、細菌性腟症を防げるのではないか?という疑問がでてきますが、コンドームの使用の有無にかかわらず細菌性腟症は同程度発症するという報告 5)もあります。よって、この仮説は細菌性腟症の決定的な原因とは言えないようです。

<仮説2:肛門や会陰近くの菌が腟内へ移動することが原因?>

何らかの方法で、肛門周囲、会陰付近の菌が腟へ移動して、細菌性腟症を誘発する可能性について興味深い報告があります。

この仮説の重要な要因として、性行為の頻度が考えられています 6)。

性行為の後、腟の自浄作用が回復するまでには時間かかります。しかし、自浄作用が回復するまでの間に、頻回に性行為があることで細菌性腟症が起こると考えられます 7)。これを裏付けるものとして、特定のパートナーとの性行為だけでも、男性パートナーのペニスや尿道にいる菌と同じ菌が腟から検出されることや、パートナーが女性同士でも同じ菌を共有して細菌性腟症を発症するケースなどが報告されています 8-12)。

このように細菌性腟症の病因については完全には解明されていませんが、発症リスクとしては以下のように考えられています。

  • ・過度の抗菌薬の服用(乳酸桿菌の減少)
  • ・新しいパートナーができた
  • ・多数の性的パートナーがいる
  • ・性行為の頻度が多い
  • ・経口避妊薬服用のためコンドームを使用しない
  • ・頻回の腟洗浄
  • ・喫煙・ストレス・疲労・睡眠不足(免疫力低下)
  • など

4 検査・診断

細菌性腟症はおりものの検査でわかります。

WHOによる診断基準(Amselの診断基準)と、腟分泌物のグラム染色を用いたNugent Scoreがあります。

近年は、より主観的要素の少ないNugent Scoreの方が汎用されています。

WHOによる診断基準(Amselの診断基準)
WHOによる診断基準(Amselの診断基準)

グラム染色を用いた判定(Nugent Score)
グラム染色を用いた判定(Nugent Score)

細菌性腟症の方のおりものをグラム染色して顕微鏡で見ると、善玉菌である乳酸桿菌の数が減少し、かわりに複数の細菌類が集合し、腟の上皮細胞の周りを膜のように覆っている状態(clue cell)が確認できます。

また、細菌性腟炎のときに観察される白血球などの炎症細胞が少ないのが特徴です。

予防会のクリニックでは、その場で腟分泌物をグラム染色し、顕微鏡で観察して迅速診断しています。「カンジダ検査」の項目には、細菌性腟症の検査項目も含まれています。

菌の種類までは判明しませんが、所要時間5~10分でカンジダ腟炎、細菌性腟症などの診断ができますので、適切な治療薬で検査当日から治療することができます

予防会クリニック検査室のグラム染色標本作成用染色液
予防会クリニック検査室のグラム染色標本作成用染色液

一方、一般の産婦人科や性感染症のクリニックでは、顕微鏡検査をしないところが多いので、腟分泌物の培養検査で調べます。

この場合、菌の培養に4~5日間、結果判明(菌の同定)までに1週間近くかかるので、適切な治療開始が遅れることもあります。

5 実際の症例をみてみよう!

実際に来院された患者さんのおりものを顕微鏡で見てみました。

A「特に変わった症状は無い」という、定期的に性感染症検査に来院の方。
細菌性膣症A

  • 腟の善玉菌である乳酸桿菌(青く染まる長めの細長い菌)が多数みられ、Nugent Score:1点で、正常です。腟内環境は良好と判断されます。

B「かゆみを伴う生臭いにおいが気になる」を主訴に来院の方。

細菌性膣症B

  • ・おりものpH≧5。
  • ・腟の善玉菌である乳酸桿菌はほとんど見当たらず、カンジダの菌糸(青く染まる糸状の構造物)とグラム陰性球菌(赤く染まる球状の菌)、グラム陽性小桿菌(青く染まる楕円形の菌)などの様々な菌で形成された菌塊が、腟の上皮細胞を覆っているclue cellが確認でき、Nugent Score:9点で細菌性腟症の診断です。
C「腟の中が熱くてかゆい、おりものが黄色くて多い、においもキツイ」を主訴に来院の方

細菌性膣症C

  • ・中心の核が紫色に染まる白血球(炎症細胞)が多数出現している。
  • ・白血球の細胞の中には、赤く染まる球菌(グラム陰性球菌)や青く染まる桿菌(グラム陽性桿菌)が多数みられ、白血球が菌を貪食している様子がうかがえ、細菌性腟炎の所見です。腟に炎症がおきていますので、腟の熱感、痒みの症状が現れます。

6 治療

現在のところ、日本で安全に使用できる抗菌薬は、メトロニダゾール(フラジール腟錠®やフラジール内服錠®)です。

フラジール腟錠や内服薬は、トリコモナス腟炎の時にも使用します。嫌気性菌にも効果があり、善玉菌の乳酸桿菌に対して殺菌作用は少ないので腟の細菌叢(フローラ)を整える働きがあります 1, 2)。有効性については経口投与と経腟投与とも同等とされていますが、副作用として消化器症状の発現率が経口投与で高いことより、消化器症状を考慮する場合には経腟投与がより望ましい選択肢とされています 2)。

一方、クロラムフェニコール腟錠(クロマイ腟錠®)は乳酸桿菌まで殺菌してしまうため、腟の自浄作用が損なわれる可能性があります。

生理食塩水による腟洗浄は、一時的におりものの悪臭やかゆみを改善しますが、頻回にすると、かえって腟内の細菌叢を破壊し、骨盤腹膜炎のリスクになると言われています 1)。


7 補助的治療

細菌性腟症に対して抗菌薬による治療を行った後の再発は1か月以内に約20%、1年以内に50%と言われています 13)。この再発を抑えるために 抗菌薬をサポートする補助的治療法の研究が数多くなされています。

中でも抗菌薬とプロバイオティクスの併用による治療は注目されています。

プロバイオティクスとは,腸内細菌のバランスを改善することによりヒトに有益な作用をもたらす生菌や微生物を含む製剤のことを指し、乳酸菌,ビフィズス菌,酪酸菌などが含まれます。消化器疾患ではプロバイオティクスによる過敏性腸症候群や慢性便秘症の治療、ピロリ除菌率の向上、抗菌薬関連下痢の予防などでの有用性が指摘されています。それ以外にも糖尿病、心血管疾患、慢性腎臓病、うつ、睡眠障害、認知症など多岐にわたり有用であるとの報告があります。また、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患にも有用であることが報告されており、これはプロバイオティクスの免疫調整作用が関与していることが示唆されています。但し、これらの疾患に対する有用性は必ずしも一定ではなく、現時点で正式なガイドライン等も作成されていません。

一方、細菌性腟症に関しては、最近の研究ではプロバイオティクスを抗菌薬に併用して投与した場合や抗菌薬治療後に投与した場合、細菌性腟症の治療効果を向上させ再発予防に有効との可能性が示唆されています 14)。但し、プロバイオティクス単独での使用が抗菌薬よりも優れた治療効果を持つというエビデンスは現在のところありません。

細菌性腟症では抗菌薬治療により異常増殖した悪玉菌の増殖が抑えられるのみならず、善玉菌の乳酸桿菌もやや減少するため、腟内環境があまり改善しないような場合には再び悪玉菌が増殖して再発するとされています。この再発を抑えるためにプロバイオティクスで善玉菌の乳酸桿菌を補充するという考え方は合理的です。補充方法には経口摂取と腟内投与があります。経口摂取した場合、プロバイオティクスはまず腸内に定着します。腸と腟は解剖学的に近接しており、腸内の善玉菌が肛門周囲から腟へと移行し定着すると考えられています。実際に、腸内と腟内の細菌叢(フローラ)には多くの共通点があることが研究で示されています。これは腸-腟相関(Gut-Vagina Axis)と呼ばれる概念です。このため、腸内環境を整えることが間接的に腟内環境の改善にもつながるとされています。但し、ヨーグルトに含まれるプロバイオティクス(乳酸菌)がすべて腟にも効果があるわけではないので注意が必要です。

ヨーグルトに加えられている乳酸菌には、ブルガリクス菌、サーモフィルス菌、ビフィズス菌、ガセリ菌、シロタ株などがあり、一方、腟内の乳酸桿菌の主体はラクトバチルス・クリスパタス菌、ラクトバチルス・ジェンセニ菌、ラクトバチルス・ガセリ菌などです。このようにヨーグルトの乳酸菌は腟の乳酸桿菌とは種類が異なります。さらにブルガリクス菌などは腟内に定着しにくい菌種とされています。従って、ヨーグルトの摂取により腸内環境は改善し、全身の健康にはプラスになりますが、それが腟内の乳酸桿菌を増やし、良好な腟内環境の形成に直結するわけではありません。

乳酸桿菌の中でもラクトバチルス・ラムノースス菌 GR-1株とラクトバチルス・ロイテリ菌 RX-14株は世界で多くの臨床試験に用いられ 15)、これらは再発予防効果が良好とされています。日本でもこれらを加えた製剤は機能性表示食品として販売されています。さらに、最強の善玉菌とされるラクトバチルス・クリスパタス菌製剤は、腟内投与で用いた臨床研究で明らかな再発予防効果が認められており 16)、今後のプロバイオティクスで最も注目されています。

以上のことから、細菌性腟症に抗菌薬とプロバイオティクスの併用を考える場合、GR-1菌株やRX-14菌株、あるいはラクトバチルス・クリスパタス菌などの今までの臨床試験で良好な成績が得られている乳酸桿菌の製剤を使用するのが理想的と思われます。しかし、実際の使用に際しては使用製品(菌株)、投与方法(経口摂取、腟内投与)、投与量(投与菌数)、投与タイミングや期間など不明確な点が多いため、現時点では診療ガイドラインには取り入れられていません。今後、質の高い大規模な臨床試験によりエビデンスが確立されるまでは、あくまで抗菌薬の補助的役割との位置づけで使用したほうが良いものと思われます。

8 細菌性腟症に関するその他の問題

細菌性腟症は、においが気になって日常生活に支障をきたすなど、女性のQOL低下をもたらすこともあります。

また、菌が上行性に子宮や卵管、骨盤内へ波及すると、不妊症の原因にもなります。

さらに、妊娠中の細菌性腟症と流早産の原因である絨毛膜羊膜炎について関連性が示されており、細菌性腟症の妊婦は、正常の妊婦に比べて、早産率が2倍以上高くなることが明らかになっています 17, 18)。

細菌性腟症によって早産で出生した場合、新生児が肺炎や敗血症、髄膜炎を発症することもまれにあります。

産後は、産褥熱(子宮内感染、子宮内膜炎)の原因としての関係も指摘されています。

最後に

細菌性腟症の病因は十分には解明されていない部分があるものの、現在のところ、性感染症ではなく性行為関連疾患(Sex associated disease)と考えられています。

細菌性腟症は抗菌薬により症状は改善しますが、しばらくすると再発することもあります。この再発予防には腟の善玉菌(乳酸桿菌)を維持し、もともと備わっている腟の自浄作用を損なわないようにすることが大切です。そのためには性行為の頻度や過度の腟洗浄の見直し、さらにはストレス、疲労、睡眠不足、喫煙などの細菌性腟症の発症リスクを減らし再発予防を心掛ける(セルフケア)ことが重要と考えます。また、再発の抑制には腟内環境を整える乳酸桿菌を用いたプロバイオティクスが今後期待されています。

【Q&A】細菌性腟症について医師によくある質問

Q1. これは性感染症ですか?パートナーからの感染でしょうか?

A. いいえ、必ずしも性感染症ではありません。

細菌性腟症は、クラミジアなどのように特定の病原体が外部から感染する性感染症とは異なり、もともとの腟内細菌叢(フローラ)のバランスが崩れ、病原菌が過剰に増殖することで起こる状態です。原因として性行為がきっかけとなる場合はありますが、それ以外にも抗菌薬の服用、過度な腟洗浄、ストレス、疲労、睡眠不足、喫煙などによって腟内の善玉菌(乳酸桿菌)が減少することにより発症します。細菌性腟症は性感染症ではなく性行為関連疾患(Sex associated disease)あるいは性行為関連細菌叢異常(sexually associated dysbiosis)と考えられています。現時点ではパートナーの治療は推奨されていませんが、今後の研究課題とされています。

Q2. 臭いが気になるので、温水洗浄便座(ビデ)でしっかり洗った方がいいですか?

A. 逆効果の場合もあります。洗いすぎないでください。

臭いが気になりビデやシャワーなどで腟の中まで入念に洗ってしまう方がいますが、洗いすぎは逆効果になることがあります。腟を守る善玉菌(乳酸桿菌)まで洗い流してしまい、自浄作用が弱まることでかえって臭いの原因菌が増える可能性があります。洗浄は外陰部をやさしく洗う程度にとどめてください。

Q3. カンジダ腟炎とはどう違うのですか?

A. 痒みやおりものの性状、臭いに違いがあります。

カンジダ腟炎は、強い痒みと白くポロポロしたカッテージチーズ状のおりものが特徴で、臭いは気にならないことが多いです。一方、細菌性腟症は、さらっとした灰色のおりものや不快な臭い(アミン臭)が気になることがありますが、自覚症状がほとんどない場合もあります。原因菌や治療薬が異なるため、症状の有無にかかわらず気になる場合は自己判断せず検査を受けることが重要です。

Q4. 自然に治りますか?

A. 無症状・軽症であれば自然治癒することもありますが、症状が続くようなら治療をおすすめします。

無症状・軽症であればしばらく性行為を控えたり、生活習慣の見直しで腟内環境が自然に回復したりすることはあります。しかし、症状がある場合放置すると病原菌が上行性に子宮や卵管、骨盤内に波及し、卵管炎や骨盤腹膜炎などの原因になることもあります。また、他の性感染症の感染リスクになります。おりものが多く臭いなどの症状が続く場合や再発を繰り返している場合は医療機関で治療をうけることをおすすめします。

Q5. 不妊症との関係はありますか?

A. 細菌性腟症と不妊症の関連が指摘されています。

腟内の乳酸桿菌が減少している環境では、他の細菌が増えるため、妊娠率が低下し、流産率が上昇することが報告されています。子宮内細菌叢(フローラ)検査の報告からは、子宮の中も乳酸桿菌が他の病原菌の増殖を防御しているとされています。腟内のみならず子宮内の乳酸桿菌が減ると他の病原菌が増えて慢性子宮内膜炎を引き起こし、着床障害や流産の原因となる可能性が示されています。

Q6. 妊娠中にかかっても大丈夫ですか?

A. 非妊娠時より慎重な対応が必要です。

妊娠中に細菌性腟症に罹患しさらに放置すると、絨毛膜羊膜炎を引き起こし、破水や早産、低出生体重児、さらに産褥子宮内膜炎の原因になることが知られています。特に早産の既往がある方はリスクが高いとされています。症状がある細菌性腟症の場合は抗菌薬での治療をおすすめします。無症状の場合は早産予防目的の治療は有効性が明確に示されていないため個別の対応になります。

Q7. 治療中、性行為をしてもいいですか?

A. 治療中は控えてください。

性行為自体が腟内環境を乱す刺激になる可能性がありますし、精液はアルカリ性のため、酸性の良好な腟内環境を悪化させてしまい、善玉菌(乳酸桿菌)が育ちにくくなります。パートナーの陰茎皮膚や尿道にいる細菌が再侵入したり、性行為そのものの刺激で炎症を悪化させたりすることもあります。治療期間中(通常1週間程度)は性行為を控えるようおすすめします。再発を繰り返している方は特に控えてください。

Q8. 市販薬で治せますか?

A. 細菌性腟症専用の市販薬はありません。

カンジダ腟炎用の市販薬はありますが、細菌性腟症に効く抗菌薬(内服薬、腟錠)は市販されていません。カンジダ腟炎と自己判断して市販薬を使用したものの治らず、病院で検査を受けたら細菌性腟症だったというケースも多いため、最初から受診することをおすすめします。

Q9. ヨーグルトを食べると予防になりますか?

A. 直接的な効果は証明されていませんが、腟内環境の改善には役立ちます。

ヨーグルトで腸内環境を整えることは全身の免疫アップにつながり、結果として腟内の善玉菌(乳酸桿菌)を維持することにつながります。ただし、ヨーグルトの摂取で直接治療や予防になるわけではありません。細菌性腟症は何らかの原因で乳酸桿菌が減少し、病原菌が過剰に増殖して起こる病態とされています。従って、良好な腟内環境を維持することが予防になります。ヨーグルトに加えられている乳酸菌には、ブルガリクス菌、サーモフィルス菌、ビフィズス菌、ガセリ菌、シロタ株などがありますが、腟内の乳酸桿菌とは異なる種類であるためヨーグルトに含まれている全ての乳酸菌が腟に良い効果を持つわけではありません。最近の研究では、腟内の乳酸桿菌であるラクトバチルス・ラムノースス菌、ロイテリ菌やクリスパタス菌を加えた製品の摂取により細菌性腟症の良好な再発予防効果が報告されています。これらの菌株を用いたプロバイオティクスは効率的な補助的治療として今後注目されるものと思われます。

Q10. 何度も繰り返してしまいます。対策はありますか?

A. 抗菌薬治療後の再発予防のために生活習慣を見直しましょう。

細菌性腟症は抗菌薬により症状は改善しますが、しばらくすると再発することもあります。この再発予防には腟の善玉菌(乳酸桿菌)を維持し腟の自浄作用を損なわないようにすることが大切です。具体的には「性行為の頻度を見直す」「コンドームを使用する」「腟内を洗い過ぎない」「通気性の良い下着をつける」「睡眠をとる」「ストレスを貯めない」「禁煙する」などのセルフケアが大切です。細菌性腟症は性感染症ではなく性行為関連疾患(Sex associated disease)とされていますので性行動の見直しは重要です。「コンドームの使用」は新規パートナーや不特定のパートナーがいる場合は特に重要です。最近の報告ではパートナーにも抗菌薬を投与すると再発率が低下するとの報告があり、まだ標準治療でないものの再発を繰り返す場合は担当医に相談してみてください。
また、Q9でも紹介しましたが、腟内環境を整えるプロバイオティクスも補助的治療として今後期待されています。

初版 2020年7月14日

改訂 2026年2月28日

予防会クリニック一覧

1) 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023. 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編. P21-23.

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