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ドキシペップ(Doxy-PEP)とは?性感染症予防薬として注目されるビブラマイシンを解説
薬について2026年5月20日
ドキシペップ(Doxy-PEP)とは?

ドキシサイクリン(商品名はビブラマイシンであり、そちらの方がよく浸透しているので、ここでは「ビブラマイシン」という呼称とします)という薬を用いた性感染症の予防が、世界エビデンスであるUpToDateでも記載されるようになりました。しかし、あくまで、エビデンスがあるのは男性間性交者のみとされています。一方、ビブラマイシンという薬は、副作用や制限の多かったテトラサイクリンという薬を改良したものであり、使い勝手が良い薬になったのですが、あまり知られていません。また、欧米ではクラミジアに対する第一選択薬になったりしています。ビブラマイシンについてまとめたいと思います。
*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate( https://www.uptodate.com )をエビデンスとして記載しております。
*監修:新宿サテライトクリニック院長/早稲田大学招聘研究員北岡一樹(M.D./Ph.D.)

1. ビブラマイシンの良さ①:副作用・制限の改善
ビブラマイシンはテトラサイクリン系という抗生物質になります。古くは、「テトラサイクリン」や「ミノサイクリン」という薬がありました。これらは吐き気が強く、光線過敏(光に当たると発疹ができる)があったりして、途中で服用を諦めてしまうといったこともよくありました。また、食事の影響やカルシウム摂取などの影響を受けるため、食事の影響がないように服用しないといけないという制限がありました。
「ビブラマイシン」はこれらが改善された薬となります。まず、食事の影響がなくなりました。それにより、食後に服用することが可能となりました。そして、食物がある状態で服用することにより吐き気が出にくくなるため、吐き気の副作用が軽減します。光線過敏の副作用も出にくくなっています。
残っている注意点としては、まず下痢は多少ありますが、ビオフェルミンなど乳酸菌製剤と一緒に飲むことである程度は抑えられます。また、食道に影響する可能性はあるため、飲むときには水をたくさん一緒に飲んでもらう必要があります。
また、かつてはテトラサイクリン系は、ピルの効果を減弱したりする可能性があるとされていました。最新のエビデンスでは、ピルの作用に影響する薬は抗生物質ではリファンピシンという薬だけとされており、ピルとの服用も問題ありません。

2.ビブラマイシンの良さ②:クラミジアに対する第一選択
かつては、クラミジアの第一選択薬はアジスロマイシンでした。今も使用はしますが、2021年から世界のガイドラインにおいては、ビブラマイシンが第一選択に変わりました。
両者のクラミジア治療効果を改めて比較する臨床試験を行ったところ、ビブラマイシンが97.4%、アジスロマイシンが96.2%とビブラマイシンの方が良好な成績でした(1)。男性に限るとビブラマイシンが94.8%、アジスロマイシンが77.4%とまで差が出ました(2)。これにより、ビブラマイシンの方が良いということになりました。クラミジアは国内では性感染症で最も多く、それに対して、ビブラマイシンは最も有効な薬ということになります。また、クラミジアが子宮や卵管まで感染してしまう、骨盤内炎症性疾患というより重篤な状態になることがありますが、その場合はアジスロマイシンでは不十分な加療で、ビブラマイシンが必要となります。

3.ビブラマイシンの良さ③:性感染症予防薬として
昨今、話題になっている性感染症の予防薬があり、それがまさにこのビブラマイシンを使用したものです。性行為後72時間以内に2錠飲むと、梅毒・クラミジアが7割程度防ぐことが出来るかもしれないというものです。ただし、あくまでエビデンスとしては、現在、男性間性交者に限っています。異性間性交者ではエビデンスがないため注意が必要です。
4.まとめ
・ビブラマイシンは食事との関係を気にしなくてよくなり、吐き気の副作用が軽減し、使いやすくなった薬
・ビブラマイシンはクラミジアに対する第一選択となっている
・性感染症予防としても使われ、一方、エビデンスとしては男性間性交者に限る
5.【Q&A】ドキシペップについて医師によくある質問
Q1. ドキシペップは誰でも使えますか?
肝臓や腎臓に障害がある場合は、量の調節が必要です。また、テトラサイクリン系(ビブラマイシンが属する薬の種類です)にアレルギーがある方は使用できません。
Q2. ビブラマイシンはいつ飲めばいいですか?
吐き気の副作用を抑えるため、食後に服用する必要があります。
Q3. ビブラマイシンは何錠飲むのですか?
治療で使用する場合は、100 mg(1錠) 、1日2回、7日間の服用となります。予防で使用する場合は、200mg(2錠)1回の服用となります。
Q4. 毎日ビブラマイシンを飲んでもいいですか?
ニキビの治療で慢性的に使用することもあります。また、以前の性感染症予防の研究においては、100 mg (1錠)、1日1回で慢性的に使用するという事も行われ、男性間性交者で効果を認めた報告もありました。確実なエビデンスはないですが、100 mg (1錠)1日1回連日や、性行為があるときのみ100 mg (1錠)1日1回などを試してみることも考えられます。
Q5. ドキシペップでHIVも予防できますか?
HIVの予防効果はありません。
HIVはウイルスであり、ビブラマイシンは細菌にのみ効果を持つ抗生物質です。
Q6. ビブラマイシンの副作用はありますか?
大きな副作用としては吐き気と下痢です。吐き気に関しては、食後に服用することで緩和されます。下痢に関しては整腸剤の服用で緩和されます。
Q7. ビブラマイシンはピルと一緒に飲んでも大丈夫ですか?
ピルとの服用で、ピルの効果が減弱してしまう薬は、フェニトイン、フェノバルビタールという抗てんかん薬、グリセオフルビンという抗真菌薬、リファンピシンという抗生物質のみです。ビブラマイシンとピルに問題はありません。
Q8. ドキシペップを飲めば検査は不要ですか?
男性間性交者ですら、予防効果は70%程度です。異性間性交者に関してはエビデンスがありません。定期的な検査は必要となります。
1) Kong FY, Tabrizi SN, Law M, et al. Azithromycin versus doxycycline for the treatment of genital chlamydia infection: a meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Infect Dis 2014; 59:193.
2) Schwebke JR, Rompalo A, Taylor S, et al. Re-evaluating the treatment of nongonococcal urethritis: emphasizing emerging pathogens–a randomized clinical trial. Clin Infect Dis 2011; 52:163.







